今日発売された週刊文春で日木流奈くんの記事を読み、何ともいたたまれない気持ちです。NHKに 再放送の予定を聞きましたが、予定はないとのことで、記事とルナくんのホームページを見ただけの時点で、これを書いております。
私の娘も、重度心身障害児(早期乳児てんかん性脳症、点頭てんかん、脳萎縮その他、、と診断された)で、10歳の今、大きな赤ちゃんみたいな子です。自力運動、言葉はありません。しかも、母の私もニューエイジ系の宗教本にはまったり、ドーマン法を習いにアメリカに夫を行かせたりしてきたもので、他人事ではないのです。(みな3ヶ月くらいでやめてしまったのですが、、、)
「ちゃんとドーマン続けてたら、うちの娘もルナ君みたいになったかも、、せめて痙攣だけでも止まったかも、、」などと少々苦い気持ちもありますが、何百万もかけて日米往復して、毎日ほとんどすべての時間を訓練に費やすお金も時間も根性(これが一番必要)もありませんでした。何人か知っていますが、きちんとドーマンをやりこなせれば、いくらかの成果はあるように思えます。幼児からドーマンを始めて高校生になった脳障害児のお母様から話を聞き本人に会ったのですが、家一軒分は注ぎ込んだとおっしゃっていましたし、毎日沢山のボランティアさんに来てもらって表の一部屋(20畳くらい?)それだけに使っているそうです。彼はふらつきながらも歩いていましたし、けいれん発作は止まっていました。ただ知能の遅れはあまり改善されたとは思えません。言葉はなく動作などからみて 小学校低学年ほどの知能でしょう。ものすごくエネルギッシュなお母様でした。
養護学校や施設で、大きくなった障害児たちと友達になってみれば、「奇跡の詩人」なんてありえないことが、よおく分かると思います。脳性麻痺で痙攣のない人の精神や知能の発達は正常ですが身体障害によりうまく表現できないことが多い。テレビのドキュメンタリー番組で、パソコンで詩を作る子など良く出てきますが、ほとんどがこのタイプの脳障害児です。ストレートでパワフルな詩や感情豊かな詩が多いと思います。「ひねくれてないで、素直になりたいなー」って思うような。
しかし重複脳障害、特に脳萎縮と点頭てんかん発作があった子供で、正常な知能を保ち得た子はほとんどいないので、11歳で天才児になるとはとても信じられません。点頭てんかんだけで その後けいれんが止まり、身体の発達のよい子でも知的障害は重く大人になっても幼稚園児のような絵を描きます。
子供が障害児で生まれると、その現実を受け入れるのは並大抵のことではありません。世の中でたった一人(いやその子と二人)おきざりにされたような、暗い穴の中に吸い込まれていくような気がしました。 私は子供のころからの本の虫で、娘の発病後、てんかんの本から、障害児の本、宗教関係の本と暇さえあれば読み漁りました。キリスト教、仏教と読んでいき、ニューエイジ系の宗教本に夢中になっていた頃もありました。瞑想してみたり、ヒーリングミュージックを聞いてみたり、、、。(NHKには、ここでも文句を言いたい――変身した元XジャパンのTOSHIをNHKのBSイギリス特集で見てから「あっちの世界」に興味もったことどうしてくれるんですか?ー)あきっぽいのと出不精で、深入りせずに済みましたが。
結局一番よかったのは、療育センターに通うようになり似た境遇の母親たちとぐち言い合ったり、たまーに遊びに行ったりすることでした。今では、まったく人目を気にせず、将来も悲観せず、ずうずうしいおばさんになって、「しょうがないものはしょうがない」と割り切って楽しく暮らしています。「なにかを諦める」ことで、頭でっかちな自分が、ちょっとはまともな奴になれたのではないかと自負しています。そうです、普通に「まっとう」に生きていけばいいのです。
いいかげんな私ですらはまりかけたのですから、ルナなんて思い込みの強い名前を子供に付けてしまうようなお母様が、ニューエイジ宗教にどっぷりはまる気持ちも分かります。彼の詩はどう読んだってニューエイジ以外の何物でもありません。私は読んでいて、若い時撮った恥ずかしい写真突きつけられたような、気まずい思いで冷や汗がでそうです。あれは、まずいです。やばいというべきか。はまっている時は、とっても楽しくて気持ちいい麻薬みたいなものです。自分がうんと偉くなった気分、ふと気が付くと回りから浮いてしまっている、、。
まだ、母親の名前で発表していれば それはそれでしょうがない。でも、あの自己陶酔に満ちた頭の中でこねくり回した言葉を、脳障害児のメッッセージだと、公共の電波に載せるなんて「ふざけるな!」です。(それともNHKは宗教的にそっち系が好きなのか?TOSHIの件も何のご説明もなしでしたよね。たぶん、元優等生の方が多いので、免疫がないだけとは思いますが、トンデモ本の存在とかカルト宗教などにあまりにも無防備ではないでしょうか?)脳障害児ってだけで、よくも悪くもむやみな偏見で見られて迷惑しがちなのに、今度は「カルトな詩」読んじゃった「ピュアーなボランティアさん」発生したらどうしてくれるんですか。(近所の新興宗教のお誘い断るのも大変なのに)
たとえルナ君の知能が高いとしても、子供を学校にも行かせずにカルトで洗脳教育しているとしか見えません。あの詩が、お母様のでっちあげなら、まだ救いがあります。ルナ君はある程度のコミュニケーションはとれるのでしょう。それでNHKの人も本当にルナ君の言葉だと思ったのでしょう。ああいう文章や詩が、第三者の介助でも でてくるのなら 私も信じましょう。でも、本当にルナ君が詩を作っているのなら、11歳にして、すっかりカルトの教義に染まってしまっていることになり、救いようのない とりかえしのつかない ことになってしまっていると思います。
反応の乏しい我が子ですが、なによりうれしい顔をしているのは、学校で先生やお友達とにぎやかに遊んでもらっている時です。将来、親なき後は人様のお世話にならなくてはならない障害児を「孤独な天才児」にしたてて、その子が本当に幸せですか?教祖さまになって、信者さんに面倒を看させるつもりでしょうか?オウムの時も感じましたが、カルトの中の子供たちほど不幸で悲惨なことはないのではないでしょうか。
ドーマン法をやっている親は、達成感や発達の成果をほしがります。試験勉強に似ているのです。やればやるだけ誉められる、ステップアップする気持ちよさ。子供が嫌で泣いても、無理矢理大人3人(大きくなると5人)で頭手足を引っ張り動かしていく。紙袋をすっぽりかぶせて息を苦しくさせて呼吸器を強くする。普通の子供にお受験勉強させるよりきつい、オリンピックの金メダルをめざすようなものです。ドーマン法やると医者と喧嘩別れになりやすいので、風邪ひいても医者に行かない親もいる。その上さらに、ニューエイジ宗教にどっぷり漬かって、ますます現実逃避する。私はこの母親に腹が立つ、そして悲しい。なまけもの母のひがみかもしれませんが。
今回の放送で、インチキじゃないかという反響が多いとのこと。もっともです。障害児を育てている親達への影響も考えて欲しかった。「この子をなんとかしたい」と願う親には、むなしい希望を与えてしまい、現実をやっと受け入れて「毎日楽しく生きていこう」としている親には、子供の可能性を奪ったのではないかと不安を与えてしまう。
「特別な障害児」を育てている「特別な親達」と、社会から疎外されがちなのに、ますますへんてこな思い込みまで引き受けるはめになりそうで迷惑です。交通事故に遭うように、障害児が生まれることも普通のことです。普通の親が普通にちょっと不自由な普通の子供を福祉に助けてもらって育てているだけです。そういう社会の認識が常識になれば、障害児だから堕胎するとか、障害者差別とかひどいことが減っていくでしょう。
「知的障害者だから人殺ししても罪にならない」とか、「身障者だからバスをただにしてくれる」とかなくていいのです。自分ではどうしようもない必要な所だけ助けてもらえればいい、バスの乗り降りを手助けしてもらうとか。これは高齢者問題も同じでしょう。ニーズにあった福祉と、特別扱いは違います。なにも、「障害児の奇跡の詩人」なんてロマンチックなもの作らないでもいいだろうに。
NHKは「素敵な話題」にすぐ飛びつかずに、重度心身障害児についてもっと勉強してから放映してほしかったです。これでは民放のUFOだの 心霊写真だのと同じじゃないですか。しかも権威ある「NHKスペシャル」でなんて、めまいがしそうです。この件に関しては、責任者からちゃんとした調査と説明がいただきたいと切に願います。